マダニ予防について
札幌市内も春の陽射しを感じるようになってきました。
ここのところ気温上昇と外出頻度の増加のためか、マダニの被害が出始めています。
一昨年と昨年の最初のマダニ患者さんは4月末日でした。今年は先週末だったので例年よりやや早そうです。
マダニを知るために
活動時期は、フィラリア予防が5月末~6月上旬スタートであるのに対し少し早めです。
一般的には外気温15℃くらいから活発に動き始めると言われていますが、一年中活動可能だそうです。
活動場所は草むらなど、近所の公園の茂みにいることも。
葉の陰に隠れて通りがかる動物をじっと待ちます。
秋に繁殖し幼ダニが増える生態なので、涼しくなっても油断できません。
本文下部にリンクを貼ります。一般の方向けですので興味を持たれた方はご一読下さい。
何が問題なのか
マダニは草むらから動物の体表部に付着した後、移動して皮膚に咬着し吸血します。
その吸血の過程で体内の病原体(ウイルス・細菌など)が動物に感染する可能性があることがマダニ感染症のリスクです。
全てのダニが病原体を保有するわけではありませんが、人の感染事例は毎年どこかしらで報告されています。
行政からの注意喚起も積極的に行われています。
犬と戸外で散歩する人は動物とご家族の健康のため、最低限の知識と予防努力はしておくべきと考えます。
予防方法は
人の場合、野山に入る時に長袖の衣類で肌の露出を減らし、服に散布する忌避剤などの対策が一般的です。
しかし犬の場合、体高などの点でダニ咬着を未然に防ぐのは困難です。
草むらに入ることが生きがい!のような子もよくいます。
嬉しそうに草むらではしゃぐ姿は止めにくいもの。
そこでダニが体表部に付着するところまでは許容し、その代わり吸血場所を探し移動している間に薬を効かせて駆除する、という発想で多くのマダニ予防薬が市販されています。
この時期TVCMでもお馴染みですね。
動物病院で処方される予防薬は現状、内服薬、外用薬(滴下タイプ)が主流です。
いずれも投薬後1か月程度有効、というものが多いのですが、中には3ヶ月間有効、という長期作用型もあります。
飲み薬が苦手、という子には滴下薬が手軽で便利です。その場合、シャンプー前後の投薬はできませんのでご注意下さい。
フィラリア予防薬と一体型も
ひとつの薬でフィラリアとマダニ予防を同時にできる製品も増えてきています。
1回の投与で済むためとても簡単、便利です。
CMの影響か問い合わせも増えており評判も良いです。
その半面、不必要な投薬・コストとなるデメリットも。
最初に述べたようにフィラリアとマダニは予防期間に少しのズレがあります。
札幌では10月の平均気温はほぼ確実に15℃は下回るので、通常マダニ予防は4月末~9月末まで。
それに対しフィラリアの投薬時期は6月~11月と約1か月のズレができます。
一体型で全てカバーすると不要な投薬となる期間が生じます。
当院では基本的にはフィラリア、マダニは別々のタイプを採用していますが、上記の理由からです。
つまり、4月はマダニだけ、10(11)月はフィラリアだけでいいでしょう、ということです。
ただし一体型を否定する意図は全くありません。
些細なことかもしれませんが、不必要な投薬を好まれない飼い主さんもおられます。
コスト面でもわずかな差は生じます。社会情勢から、将来の(動物用含む)医薬品価格上昇は避けがたいと予測しています。
マダニ予防と予防薬の特徴について、飼い主様のご理解の一助となれば幸いです。
以下、簡単にマダニの生態について。
NIID 国立感染症研究所 「マダニ対策、今できること」より抜粋
https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/2287-ent/3964-madanitaisaku.html