夏~秋をふりかえって
大発生した雪虫も少し下火になってきたでしょうか。
次の冬もスーパーエルニーニョとかで数年ぶりの暖冬となる確率が高いそうです。
季節の変わり目、体調管理にお気をつけ下さい。
動物病院に来る患者さんも季節性があります。冬を迎える前に今夏~秋の診療を来院例をもとに振り返ってみます。
外耳炎
非常に多いです。夏は最多かも?
・犬種傾向は垂れ耳、脂漏症のシーズーやトイプードルやアレルギーの柴犬など。
・耳が痒い、臭う、赤い、ただれている、などで気づく。
・高温多湿が増悪因子。
・耳道内を確認して毛が多い場合は耳垢排泄を邪魔するので抜去し、耳道洗浄をして点耳薬を投与。
・時々、耳道内異物や腫瘍もあるので要確認。
・アレルギーを背景に、繰り返すことが多い。
トリミング、または病院でもあまり耳の処置をしてくれない所もあるようです。
とくにプードルなど耳毛が多い犬種は、耳毛の処理をしてくれているかどうか確認を。
私見ですが、「嫌がるから触りませんでした」は本当の優しさではないと考えます。(もちろん限度もありますが)
アトピー性皮膚炎
同様に多く外耳炎とセットで来ます。
秋になってから悪化パターンも多い印象。
・特徴的な部位、年齢、犬(猫)種、繰り返すかゆみが主症状。
・基本、初診で確定はできません。疑いのある子には伝えます。
・一定期間で症状の寛解・増悪を繰り返す。
・除外診断が基本かつ重要。ステロイドやオクラシチニブ内服に良く反応し、複数回の除外検査で膿皮症、食物アレルギー、寄生虫、真菌、腫瘍など他疾患を否定できた場合にアトピー性皮膚炎と診断。
近年、猫も意外と多いです。
痒み止め薬の選択肢は増えてきましたが、人のアトピー同様、原則完治は難しいと言われています。
シャンプー等スキンケアは超重要です。初診の方は、今使っているシャンプーを教えて頂けるととても助かります。
余談をひとつ。
アトピーと間違えやすく初期に区別が難しい皮膚疾患のひとつに皮膚リンパ腫があります。
悪性リンパ腫の皮膚型で極めて悪性度が高く、多くは数か月で亡くなります。かなり珍しい病気だけど鑑別疾患のひとつです。
犬のリンパ腫の発生頻度が全腫瘍中7~20%程度(諸説あり・意外と多い)、さらに皮膚リンパ腫はそのうち6%程度といわれます。繰り返しますが皮膚型はかなり珍しいです。
当院で昨秋から年初まで、病理検査で皮膚リンパ腫と診断し抗がん剤治療をした子がいました。
はじめはアトピー性皮膚炎と脂漏症の治療を行うも、痒みと皮膚病変がほとんど良化せず。
繰り返し皮膚検査をする中で毛包虫を検出したため、これが治らない原因かと駆虫を行うも良化が見られない。
徐々に皮膚に結節病変が現れ、明らかにアトピーではない。
ここで全身麻酔下で病理検査、皮膚リンパ腫と診断。
皮膚リンパ腫治療でコンセンサスのある、ロムスチンを用いた化学治療を行いましたが、診断から5か月近く闘病の末、息を引き取りました。
上記は極端な例ですが、皮膚病が治りにくい時は基礎疾患を疑い精査が望ましいという一例です。
しかしながら、皮膚病の治りが悪い時に、「皮膚の検査」は飼い主さんの同意が得られやすい反面、「血液検査(あるいは病理検査)」は同意が得にくいことが多いです。
このような事例を伝えることで、診察室の、限られた時間では話きれない「獣医はこんな事も考えてるんですよ」っていう背景が少しでも伝わると良いなあ、と思います。
皮膚真菌症で使用するwood灯
真菌(カビ)は子猫に多いですが抗がん剤症例も要注意。
その他
熱中症は幸いゼロ。
異物誤食も数件、いずれも催吐処置で事なきを得ました。
新規の糖尿病が数件続きました。比較的若い犬(5~8才)でしたので飼い主さんもショックを受けられていました。インスリン注射を飼い主さんに指導して食事療法、投薬で安定しています。
飼い主さんが多飲多尿の症状に早く気づいてくれたおかげで重症化せずスムーズに進められました。
血糖管理と合併症に気をつければQOLを保ちつつ長生きできる病気です。
人医療で糖尿病の病名がダイアベティス(Diabetes)に変わるそうですね。
変更にも賛否あるでしょうが当院で飼い主さんに説明するときには当分「糖尿病」を使います。
いきなり動物病院で「ダイアベティス」って伝わらないですよね?意味が伝わることを優先とします。
長くなったので今回はここまでにします。
最後まで読んで頂いた方、ありがとうございます。