新薬の話題(糖尿病)
今年9月、ベーリンガーインゲルハイム社から新薬が上市されました。
商品名「センベルゴ」、適応は猫の糖尿病です。
新しいお薬は日々出て来ますので、簡単に解説してみます。
糖尿病の猫の飼い主さんの参考になれば幸いです。
はたらき
本剤は腎臓に作用して血液中の糖を尿中へ排泄する「SGLT2阻害剤」というものです。「SGLT2」は腎尿細管からナトリウムと糖を再吸収する輸送蛋白で、この働きをブロックすることでブドウ糖を尿と一緒に出してしまいます。
→要約すると血糖値を下げる薬です。
メリット
大きな違いはインスリン(注射)と違い内服薬(1日1回)であること。
低血糖になりにくいこと。
この2点は飼い主さん目線でかなり大きいと思います。
インスリンとの違い(大事!)
「血糖値を下げる」と言っても、インスリンとは作用が全く異なります。
インスリンのように「エネルギー源であるブドウ糖を細胞の中に取り込んでくれる」作用はありません。
そのため糖尿病の猫が皆、使用できるわけではありません。
基本的には、膵臓がインスリンを作る余力がある、いわゆる2型糖尿病が適応となりそうです。
インスリン分泌能が枯渇している猫に、インスリンを使わずこの薬だけを使用した場合、重篤なケトアシドーシスに陥る可能性があります。(正常血糖ケトアシドーシスと呼ばれます。)
処方する側にも患者さんの見極めが求められそうです。
期待すること
実は人の医療では2019年頃から1型糖尿病の患者さんにも併用薬として使われています。
いずれは猫でもインスリン注射とSGLT2阻害剤の併用が普及するかもしれません。
より良好な血糖コントロールが可能になったり、インスリンの使用量を減らしたりできるかもしれません。
個人的に注目している点として、
SGLT2阻害剤は人の医療において、糖尿病以外の心臓病・腎臓病の進行を遅らせる効果が認められているそうです。
将来は動物病院でも慢性腎臓病などに適応が広がるかもしれません。今後に期待です。
以上、簡単ですが「センベルゴ」の紹介でした。
新薬の情報に触れて、自己判断でインスリンを止めてしまう飼い主さんが現れないように、という意味も込め解説してみました。
治療内容に不安がある時は必ず病院に相談して頂ければと思います。